現代の人間を十把一絡げに、「こういうタイプ」としてしまうのは、あまり良くないことかと思うが、「わかりません人間」と僕が呼んでいる人種を紹介したい。
連中の特徴は、自分の考えをアウトプットする前に、「わかりません」と答えることである。学校などで、先生から指名されると答えを考える前に「わかりません」と答える。本当にわからないのではなく、テストなどでは、キチンと答えることができるのだ。
推測ではあるが、なぜ、そんなことをするのかというと、指名されて皆の注目を浴びる中で答えたくないとか、「わかりません」でスルーできるなら、それが一番効率が良い(と本人は考えている)とかの理由が考えられる。
本人よりも、それを許容して来た教育機関に問題があるのは明白であるが、学校の中では、こういう人間は余り問題視されず、社会人になってから本人も周りも非常に苦労するのが実情だ。
彼らは、今まで生きてきて問題があっても「わかりません」でスルーして来たせいなのか、常に受動的であり、自分からアクションする事がない。そして、自身の問題を問題とは捉える事が出来ない。
知人から聞いた話である。
20歳派遣社員のAくんは典型的な「わかりません人間」である。
Aくんは物分りがよく、直ぐに仕事を覚える。
しかし、Aくんは、作業がわからなくなると、フリーズしてしまうのである。
「どうした、Aくん、わからないことがあるのか?」
「………」
「ん? ああ、これか。……こうするんだ! 次、わからないことがあったら、直ぐいってくれ!」
「……」
「(ありがとうとか、ないのか)」
しばらくすると、Aくんがまたフリーズしている。
「どうした、Aくん、また分からないんか?」
「……」
「ごめん、何がわからないんだ?」
「……ゴニョゴニョ」
「は? ごめん、聞き取れない」
「……ゴニョゴニョ」
「聞こえんから!」
「……ゴニョゴニョ」
「……(ブチッ)いい加減にしろ! イチイチお前になんでお伺いを立てて、聞かなあかんのじゃ! お前、喋れない訳じゃないだろ、二人作業してる時、危なかったら、危ない! って叫ばなければならんのやぞ!」
「……ゴニョゴニョ」
「……もう分かった、紙貰って来て。筆談しよ。時間が勿体無い」
「……ゴニョゴニョ」
「……嫌なのか。じゃあ、どうすんの」
「わかりません」
「は?」
Aくん、さっきから時計をチラチラ見ている。
終業2分前だった。
「なあ、さっきから時計見てるけど、俺は、お前の為に時間割いて教えてるんやけど。自分の仕事止めてさ。それより大事な用事あるんか」
「はい」
Aくんは、そう言って帰ったそうだ。
ちなみに、Aくんには、家族がいなくて、友達もいなくて、休日の過ごし方は「別に……」だそうである。