自慢ではないけれど、僕は数字が嫌いだ。計算する脳の機能は衰えきっている。時々、割り勘の計算が間違いフリーズすることがあり「今もしかしてケチだと思われているのでは……」と変なプレッシャ―を感じる時がある(ってか、そこで「めんどくせえ、この場は俺が払う!」と言えないのがケチなのか)。
何気なしに友達との会話で、数字の話になった。
友達が言うには10進法が、宇宙のどの星に知的生命体が誕生したとしても採用される「普通」のn進法だという。理由を尋ねると、「10ってピッタリな数字じゃん」「2進法とか、12進法とか、16進法とか変なところで区切ってるよな」と言った。
僕が「でも時計は……」と口答えすると「じゃあ、16進法は意味がわからん」と言った。口下手な僕は上手く説明できなかったが、「10がピッタリという感覚そのものが10進法の世界なんだよ」と言った。16進法の世界では、16が10進法における10なんだ。9の次が仮にa(10)、b(11)、c(12)、d(13)、e(14)、f(15)となり10(16)で、11(17)だ。10進法のアラビア数字表記にaを表す数字がないからピッタリにならないんだ。
どうしても理解してもらえなかった。
件の友人は頭が悪いわけではなく、こと数学においては通年赤点の僕とは違って90点以上毎回とっていた。いや、もしかすると食わず嫌いなだけで、数学の素養は僕の方が勝っていたのだろうか?