毒雲日記

冴えないワ・タ・シのポイズンダイアリー

アルドノア・ゼロのラストの見解(ネタバレ有)

 

めちゃくちゃ良かった。

あらすじとしては、火星で見つかった異星人の超科学技術「アルドノア」を手にした人が皇帝となり地球から独立。皇帝の孫娘である皇女が和平のために地球に訪れるが、地球を侵略したい一部の帝国騎士が地球の仕業と見せかけて皇女の暗殺を企てる。こうして地球対火星の戦争となってしまう。軍学校に通う少年が、オーバーテクノロジーのロボット兵器に、特殊能力を持たないロボットで立ち向かうという流れだ。

ガンダムを手に入れたジオン軍にザクで立ち向かうアムロという感じかな。

他のキャラに比べると、ちょっと作為的なくらい能力の高い主人公が、敵の超兵器をやっつけてスカッとするという展開。

 

まずは、よくなかったところから言うと、話の根底として「アルドノア」を手に入れた帝国がどうして資源に苦しみ、旧態然とした封建制度を取り入れ、地球資源を狙う必要性があるのか納得できなかった。地球にしか資源ない訳ないし、あのオーバーテクノロジーあるなら人工知能も自立機械も作れるだろうし、そいつで土壌改良した温室つくればいいやん、と思った。その指摘しても話が始まらねーし、と言われればそこまでの部分だが、これに気づくとちょっと興醒めだった。

 

もう一つはサブキャラクターが魅力的だったが、風呂敷ひろげといてキチンと描ききれて居なかったように思う。父を殺されたライエは、結局折り合いついたの? 鞠戸とマグバレッジの決着、ユキ姉ちゃんとは恋愛に発展するの? レムリナ姫のその後は(ちょっとオルフェンズを連想した)? 続きがあるのかもしれないけれど、キチンと描いて欲しかった。

 

この話には3人の主人公がいて、地球の軍学校出身の界塚 伊奈帆、地球人でアルドノア研究者の息子のスレインがライバル同士で、皇女のアセイラムを巡って争う展開だ。僕が想像した展開としては、オーバーテクノロジー兵器を物ともしない超天才の伊奈帆が恋においても無双して、レムリナ姫をそのままアセイラム姫の影武者に仕立てる的流れかな〜って思っていた。ラストは承知のとおり、アセイラムは、ぱっと出てきたイケメンと政略結婚、スレインは表向き死刑、実際は無期懲役刑というラストで、伊奈帆は左目を失うというものだった。

アセイラムは男主人公の添え物ではなく、皇女としてキチンと仕事を果たしたと言える。スレインは、アセイラムのためにした事が、最終的には振るわなかったけれど、それでも「許し」を得る事ができた。伊奈帆は左目を失ってから自身の半身とも言えるアセイラムとは一度も会話ができなかった(左目のアナティカルエンジンを通じてのみ、アセイラムと自分の気持ちが同じであることを知る……せつねぇ〜!)。

世界的には戦争回避できて良かったけれど、ラブ的には成立なしという感じで、不満に思うかもしれない。アセイラムが来なければずっと平和だったと思うかもしれないが、どちらにせよ騎士のクーデターは回避できなかったと思う。

 

そういう感想に対して僕が補足しておきたいのは、ラストで伊奈帆がスレインに「もう左目は必要ないから」と言ったセリフについてだ。僕はこの言葉に凄く違和感を覚えた。もう戦う必要性がないから左目を取ったという意味だろう、と最初は思ったのだけれど、片目だけでは生活が大変だし、機能制限して視界確保するだけの意味で残しておいてもいいだろうと思った。なのに、なぜ取り外したのか。

伊奈帆が嫌な奴なら、命がけでアセイラムの願いを叶えてスレインを助けたのに、お前に撃たれて左目なくしちまったよ~ってスレインに示したいって事なんだろうと思う。でもそうじゃない。

アナティカルエンジンの中には、アセイラムの「私も貴方を自分の半身だと思っています」という告白の伝言が残っているのだ。

だから「もう左目は必要ないから」の意味は、もう戦う必要性がないからではなく、個人の心情を殺して、女王として火星と地球の平和を選択したアセイラムの気持ちを組んで、その記憶と決別するという事だと解釈できるのだ。そう解釈すると、この主人公は最後まで超人だったな、と思うのである。